サムライ8 八丸伝 第11話「ふざけたマネを」感想⑤
「ちょっ…!
オレ…武神
流星の不動明王様みたいに
なるのが夢なんだぞ!
そんな勝手に…」(八丸)
「お前ごときが
…神になるだと!!
神の名を軽々しく口にする事すら
おこがましい!!」(アタ)
(キレるスイッチが分かんないよ…)(八丸)
「八丸…少し黙っていろと言ったろ…!」(フルタ博士)
「でも…」(八丸)
(これは…夜叉流「仕込み斬り」…か
…なかなか直らぬ!)<パキ><パキ>(達麻)
「…若輩者がさんざん口にしてきた夢口上だな…
その手の話はもうさすがに聞き飽きた
神の名を出し嘘ぶいてまで酔いしれ強がり……
弱者が威張り散らすのは何のためだ?」(アタ)
「……」(八丸)
「これから流星の不動明王みたく
銀河をまたにかけて大活躍するんだよ!
オレが次の流れ星なっ!!」(八丸)「む…昔から活発なガキでさぁ~!
そら強かったのよ!
道場の仲間から神童なんて呼ばれちゃってさ――」(八丸)
「お前には「勇」が無いからだ
まるで負け犬の遠吠えだな
お前のは…」(アタ)
<ドサッ>(八丸)
<ザッ>(アン・早太郎)
いろいろと問題児のアタさんですが、ここだけは「よくやった!!」と言ってやりたいです(笑)。そもそもデリカシーがなくて軽々で、その上、思いっきり不用意な八丸のしゃべくりが僕は苦手だったので、八丸が驚いて尻餅を着くくらい怒鳴りつけてくれたアタさんの頭を<ポン><ポン>としてやりたい気持ちに駆られました(笑)。そうなんですよ!!これまで八丸の軽口が鼻について耳障りでした〜!!それをここまで…ここまで完膚なきまでに押し込んでくれたアタさんに心から感謝します(笑)。
ま…しかし、ついこの間まで八丸は生命維持装置のチューブに繋がれた不遇な生活を送ってたのが、急に自由を手に入れたばかりか、侍になってサイボーグの身体とキーホルダーの早太郎まで一緒にゲットできて大空を駆け回ったり、刀を振り回した大立ち回りまでできるようになったんだから、舞い上がる気持ちも分からんでもないけど、如何せん、落ち着きがなさ過ぎて、雑音に弱い神経質なケルベロスは八丸が苦手で苦手で…(笑)。でも、少しは大目に見てあげてもいいかも…ですかね。
でも、こんな風に達麻や葉芽道は八丸を追い込めないだろうし、やっぱ容赦ないアタさんが八丸にブチ切れてくれてよかったなー…と思います。さすがは達麻の一番弟子といったところでしょうか?!(笑)アタさんにも物事の核心が見えているのでしょう。それは心眼がある…という事。その眼が浮ついた八丸の薄っぺらな生き様…生き様ですらない無為にして無垢な呼吸ですかね…を激しく糾弾しているのです。非常に厳しい言葉ではありましたが、いつかは誰かが伝えないといけない事だったと思います。
生きている…という事と、死んでいない…という事は根本的に違うのだけど、その真意を八丸はまだ知りません。それは八丸が生かされているからなんですけど、そんなの子供なら皆そんなもんです。だから、そんな子供の八丸にここまで厳しい事は言えないのが達麻や葉芽道であって、そんなの御構い無しなアタさんとの決定的な差なのであります。結果的にはこのアタさんとの出会いが八丸の成長のショートカットになったので良しとしますが、本当はもっと時間をかけて付き合う罠(笑)。
八丸は内面がものすごく空虚なのです。それは圧倒的に経験値が少ないからです。他者との関わりとか、社会の中での自分の役割の模索とか…普通は子供であっても学校や公園でコミュニティに属して社会性を養う過程が存在しますが、八丸にはそれがほぼ皆無でありましたからリソースの取り込みが乏しいのです。そもそも八丸は入力が苦手なのもあり、個としての成長が等閑(なおざり)にされていた事は否めません。それを今、急速に補完しているのですから、若干アクロバティックなのであります(笑)。
ここで為されたアタさんの強力な出力は、入力が苦手な八丸にも充分に届いたと思うんです。コンプライアンスの厳格さを求められる昨今、達麻や葉芽道に斯様な真似がどうしてできましょうか!?(笑)だから、アタさんで良かったのです(笑)。この時、八丸が何を思えばいいかと申しますと、「ああ…こういう事はいけないんだ…」でいいんです。それが経験というものなのであります。失敗は悪く無い体験なのです。本当に悪いのは同じ失敗を繰り返す事であります。失敗とは成功の母なのであります!!
例えば、どんなに可愛い愛犬であっても粗相をした時は厳しく叱ります。それは事の直後、数秒から数分に限定されますが、その子の為に心を鬼にして伝えます。それも失敗を咎めるのではなく、これはいけない事なのだと教えているに過ぎません。犬と人の子は同列に語るべきでは無いけれど、無垢な魂という面では極めて近いとも言えます。ちなみに、怒るのと叱るのは全く違いますからね。怒るのは感情で、叱るのは理性です。大人が子供を導こうとする時は怒るのではなく叱らねばなりません。
先ほど、心を鬼にして…と申しましたが、アタさんは鬼侍で、ナチュラルに鬼だったから、普通に喋るだけで八丸にはきっと堪えたのね(笑)。それと、アタさんは八丸の目上の人(師匠)に対する口の利き方がなっていないと切れてましたから、その道理の線上に乗っかっていて、八丸に対しては怒るというよりは叱るベクトルでアタさんが接せられたのも八丸にとっては良かったのでしょう…結果的にですが(笑)。その幸運が八丸の僅かな脳のキャッシュメモリーに残る記憶の残滓をかき回した訳だ。
尚も八丸に圧を鎮めないアタさんの前に立ちはだかったのがアンちゃんと早太郎だったのに、八丸も何をかを感じ始めています。アタさんの言う「勇」なんてのは、悲しいほどに凸凹だった僕であろうと、今の僕ぐらいのおっちゃんになれば自然と理解できます。その前に、めんこいだけかと思ってたアンちゃんの凜とした表情をみてくださいよ。それに今やキーホルダーではありますが、単なる介護ロボットに過ぎなかった早太郎のカッコ良さときたらッ!!この子らが「勇」を明確に示してるじゃないですか!?
八丸はこの光景を見過ごしてはいけないのであります。自分の犯した過ちというものから目を逸らしてはいけないのであります。鬼のアタさんの一喝が、この刹那の予行演習になって良かったと思います。そして、この一件が誰かに守られる側から誰かを守る側へと八丸が歩みを進める契機になればと願います。これは「学び」の過程であり、真に生きるということの気付きでもあるので、その目をカッ穿ってよく見てください!!少年少女には教えたいけど教えられません!!時が経てば、いつか気付けるのだけど、それは早いに越した事はありませんので…。
続きまーす!!