サムライ8 八丸伝 第12話「誰のために、何のために」感想⑥
「…!!」(アン)
「くっ…」(八丸)
「…なぜ侍が強くあらねば
ならないか分かるか?
生身の武士とは違い
侍は血を流して死なぬ…
侍の死は己で負けを認めた時——
武神から見放され体が散体して…死ぬ
表面上いくら強がろうとも
心の底で強く「勇」を持たねば――――
死ぬのだ
だから侍は強くあろうとする
そしてお前に――――――…
勇はない!」(アタ)
本当に侍は「あきらめたらそこで試合終了だよ」(スラダンの安西先生)だったのね(笑)。しかし、これだとめちゃくちゃ頑固で他人の話を全く聞かないオッチャンがなかなか死なない設定で不公平に思えますが、そういう場合は強制的に武神が見放しちゃうんでしょうね(笑)。だからコントでよくある斬られても斬られても死なずに何度でも起き上がってくるアレは心配しなくてよさそうです。でも、死なない為に心の底で強く「勇」を持たねば—というのは順序が違う気がします。
「誰のために、何のために」を読み込んできて、このお話の中で一番変わったのは八丸の気持ちの在り方だったと思うんです。これまでは守られる側でいた(いさせられた)八丸が、初めて自分の意思で誰かを守る側にまわって、顔つきがコロッと変わっちゃったじゃないですか!?それ以外にも立ち方とか、歩き方も全然変わっちゃったんですよ。それは侍の身体を得た八丸が自分の力の使い方に目覚めた証だと僕は思うんです。八丸には自分の役割…つまり八丸の「義」がしっかりと理解できたんですよ。
具体的には「ここにいる人達を必ず護る!!」と八丸がアタさんに宣言しています。八丸はパパやアンちゃんに達麻や葉芽道をアタさんから守り抜く覚悟なのです。それが今の八丸の「義」でありまして、実際、八丸はそれを腹に据え、アタさんと戦っているのです。そして、アタさんに袋叩きにされようが切り刻まれようが死なないで元気にやっています(笑)。第一、面構えが全く違うじゃないですか!!アタさんに一喝されて尻餅ついた時(第11話「ふざけたマネを」)と比べてみても雲泥の差です!!
八丸が気付き、腹に据えた「義」が、八丸の「勇」を創り上げているのです。八丸に「勇」が備わったから、アタさんに何度斬られようが立ち上がり刃向えるのです。しかし、アタさんには八丸の「勇」が見えていないのでしょうか?「お前に勇はない!」なんて…アタさんには心眼があるのに何でこんな事を言うのだろう?と疑問に思えたんですが、アタさんは「嘘」をついているんじゃないですかね。これはアタさんの「遠吠え」なんだと、僕は思うんです。アタさんも気付いてないかも知れませんが、八丸に圧されてるんですよ。
闘犬の世界で「セリ声」は必要ないとされているように、本当の戦いにおいて言葉など無意味なのです。それをアタさんは八丸に教えてたんですが、アタさんが「犬ころ」で「負け犬」としたよく吠える八丸ではなく、自分の「義」に気付き、心の奥底に「勇」を携えてアタさんの前に立ちはだかる今の八丸の余りの変わり様に着いて行けてないんでしょう。オッチャンの対応力なんてこんなものなので僕にはよーく分かります(←自慢するとこかーッ!?)。八丸には既に「勇」があぁるんですゥッ!!(川平慈英風)
「…違う」(フルタ博士)
「八丸……
お前は強い子だ」(フルタ博士)
「そしたら…父ちゃん
心配ってのしないで…………
安心できる?」(八丸)「ああ!強い八丸は
父ちゃん大好きだ!」(フルタ博士)「フフフ…そう?
分かった……」(八丸)
<ニコ>(八丸)
「…今まで…すまんかった……」(フルタ博士)
「父ちゃん
やってみるよ…オレ」(八丸)
「いざっ!!!」<ガッ>(八丸)
「!!?」(アタ)
きっとフルタ博士も僕と同じ事を考えているんだろうなーと思うんです。だから、力を振り絞るようにアタさんを「違う」と否定しているんです。そして、八丸に「お前は強い子だ」と伝えた…。その声に八丸は幼き日にパパがくれた記憶をもう一度思い返して、<ニコ>と笑うのです。八丸はパパの為に強がり笑えたのであります。もう八丸には「誰のために、何のために」がしっかりと理解できているのです。そして、そんな八丸を見てフルタ博士は安堵と共に贖罪の念が噴き出してくる…。
やはり、フルタ博士は八丸をなんちゃって生命維持装置で家の中に閉じ込めていたのだと思います。しかし、それはニリ姫の感知から逃れる為、元気に外を飛び回って本来の姿に目覚めてしまっては戦いに身を置く事になる…と心配する親心があったからですが、フルタ博士も本心でそのやり方に悩んでいたと思うのです。八丸は本当は「強い子」というのは、八丸の本来の姿や素養を知りながら敢えてそれを伸ばさなかった…
親としての選択を後悔する気持ちが詰まっているように思えます。
「…今まで…すまんかった……」
…というのは、そんなフルタ博士の選択を後悔する気持ちと、八丸に懺悔したい気持ちが渦巻いているのだと思います。もし、この描写に対する種明かしがあれば八丸の出自に関わる疑問や、達麻が感じた八丸の「不自然さ」というものが払拭されると思うんですが、フルタ博士が相当ヤバイので、もうこうなったらそこに転がってる馬侍のロッカーボールで切腹して頂いて一か八かで侍になるしかないですね(笑)。そうなったら洗いざらい話して貰えると思うんですが…武神様はウンと言ってくれるでしょうか?
第12話「誰のために、何のために」 ハチマル ケルベロス 了