サムライ8 八丸伝 第14話「父の秘密」感想①
「…!?
オレの……兄弟!?」(八丸)
「そうだ
ボクは一角
…君の兄だよ」(一角)
「!!?」(一同)
「ニャン!?」(早太郎)
「博士から何も聞いてないようだね」(一角)
「博士…?」(八丸)
「そこに倒れている男だよ
ボク達……
七つ子を造った<ザッ>
血の繋がりのないただの博士さ」<ザッ>(一角)
「!!?」(八丸)
「もとい……
八つ子か……
失礼…君の事は忘れやすくてね」(一角)
「…望まれてそうなったんじゃない
八つ子になってしまった
君は偶発的に発生した余りものなんだ」(一角)
「八つ子…?
余り…もの?」(八丸)
「そう…」(一角)
<ズウウウン…>
「ボクら「7人の侍」は
箱を開けるために必要な
「7つの鍵」として造られる——はずだった
けど8人目の君が生まれてしまった事で
バランスが崩れ……
「7つの鍵」の効力が薄れてしまったんだ
八角…君の力をボクら7兄弟に還元して
戻してくれない事には箱が開けられないのさ
だから君が要る
もちろんそうなると君は——
死ぬけどね
でも
それがこの計画の本来あるべき状態だから
分かってほしい
…そもそも造られてすぐ君だけ
死にかけたそうだよ
…ボクらの力を図々しく奪っておいて……
実験の結果から見ても<ブウウウン>
ボクら七人は成功作なんだ
君を除いてね…
君はこの計画の失敗作さ」(一角)
前回、お話の最後に登場した七人の胸にトランプのダイヤが1から7まで刻まれてるのを見て、もしや…!?と思ってましたが、ダイヤの1が一角くんだったのね(笑)。八丸が八角と呼ばれてたんだから、これはエクセルだって間を二角〜七角で埋めるパターンでしょう(笑)。それで八丸に対して一角と「角」に拘るのはアタさん達がキューブ宇宙の住人だからだと思います。多分、それの反動形成でフルタ博士は八丸を八角とは呼ばずに八丸として育てたのだと思います。ちなみに八丸達はボール宇宙の住人ですね。
アタさん(自性輪身)が八丸達を襲う段になって「八角」としていたのを、完璧なまでにスルーして無反応を貫いたフルタ博士に八丸のパパとしての矜持を感じていました。だから、僕は彼を「フルタ博士」ではなく「パパ」と呼称したい気持ちでした。八角をアタさんの追跡から逃れるならば、「八丸」なんて「八角」の近場をわざわざ持ってきませんて。そこにはパパとして八丸に出会ってしまった…いや違うな…出会ったからパパになったフルタ博士の意地みたいなものを感じてなりません。
パパ(あえてフルタ博士じゃなくて)はアタさんが何度も「八角」と言うのを完璧に無視してましたよね。八角じゃなくて八丸だ!!みたいなエクスキューズもなく、これが人生幸朗師匠&生恵幸子師匠のぼやき漫才(…ふ、ふ、古ッ!!)だったら落ちに使えそうなところを完全に使わずに八丸を八丸として認識して断固として貫きました。それは最後の最後までアタさんから八丸を隠し通し、護り抜く…八丸のパパとしてのフルタ博士の決意だったのだと思うのです。
ま…そんなフルタ博士の不自然な動きにツッコミを入れなかったのはアタさんの武士の情けと申しますか、ワルではありますがクズではないアタさんの性根が見て取れる描写でもありました。この物語では科学技術がとんでも技術として発達しています。普通に刀が浮かんでてそれが使用者に着いてきますからね。身体の欠損も簡単に義体化で補えますし、その反面、命というものが軽々しく感じられます。侍なんか、もう人ですらないサイボーグです。腕を斬られても痛くないし、また生えてくる…。
そんな世界観の中で人はどう在るべきなのかを問いかけているのではないかと思うんです。それを考えていると、サイボーグとなってしまった侍の立場が!?…となるんです。僕はこの違和感にこそ、この物語の芯があるんじゃないかと考えています。アタさんを見てて、そんな風に思えてきたんです。達麻も八丸に「勇」を教えようとしてました。紆余曲折の末、八丸はアタさんの脅威を足場にして己の「義」に気付き、行動に移せたのであります。そして、達麻はそんな八丸の中に「勇」を見出しました。
人…人間って何なんだろう?と、僕は考えていました。それが少しばかり分かりにくいから、岸本先生は時代背景を極端に進ませて、人の命とか、人じゃないサイボーグの侍を使って僕らに考えさせようとしているのではないかと、僕は思うのであります。それが何を意味するのか?に関しては、僕を含めたおっちゃんやおばちゃんクラスの人達には説明が無用でありましょうが、まだ護られる側にいる少年少女には難解なのかも知れません。しかし、それをここで僕なんかが明かすのは極めて不遜な事であります。
僕もまたフルタ博士ではなくパパで在りたいと思うので、ここはパパさんのように貝のように押し黙り、この秘密を隠し続けようと思います。たまに不覚にも漏れてしまうかも知れませんが、高齢者の不徳の致すところとお許しください(笑)。夏なんで、お盆も過ぎて、歳を重ねるといろんなお別れを経験して胸にぽっかりと穴が空いてしまうことも多いですが、それを埋める事が供養でもありまして、僕はいろんな事を忘れないでいようと思っています。それは「勇」を失わずに生きていく決意でもあります。
あー…お話がアッチにいってしまってすみません。ここに登場した一角から七角の7人の侍は八丸の八つ子の兄弟で、八丸は”ANOMALY”として偶発的に発生した余計な鍵(?)だったようです。”ANOMALY”とは「異常」とか「原則からは説明できない逸脱」という意味です。恐らく八丸の存在が一角から七角までの能力を少しずつ奪って薄めてしまったんですね。1/7×7が八丸で、一角から七角が6/7の状態なのかな?だから一角が若干怒ってますよね。八丸が図々しいって(笑)。
それで一角から七角までの鍵としての効力が不全になって箱が開かない…という訳だ。だから、アタさんは八角が必要なんですね。「7つの鍵」が揃ってるんならサッサと箱を開けろやーなんてお下品な事を言ってしまってスマセンですた(笑)。箱を開ける為に八丸はこの子らとアタさんらに狙われ続けるんですね。これでやっと闘争の構図が見えてきました。これまでは何と戦うのか?何の為に戦うのか?がハッキリと見えてませんでしたから、いろいろと整理されて何だかスッキリとしましたー。
「まさか…!
お前達はすでに「パンドラの箱」を…!?」(達麻)
<スッ>「そっちじゃない
「マンダラの箱」の方ですよ…師匠」(アタ)
「!!」(達麻)
「…2つとも手にするのは
我々 烏枢沙魔流だ
そして…
これらを手にしていた前任者
武神——不動明王と同じ神となり
宇宙を手にする!
八角を連れ戻し
我らがこの宇宙をあるべき姿に戻す!
まずはお前達金剛夜叉流を含めた
他の4流派
そしてその息のかかった宇宙域を全て
消す事から始める!」(アタ)
「それを…ハンナが望んでいると
思うのか!?
裏切り者になってまで…!」(達麻)
「……
先に裏切ったのは
オレじゃない…
神です」(アタ)
「だから神に成り代わると言うのか!?
神の名を軽々しく口にしているのは
どっちの方だ」(達麻)
<ジジ…><ジジ…><ボロ><ボロ>
「勇を失ったな…
アタよ」(達麻)
「次に会う時があれば…師匠
アナタは全てを失う
最後に置き土産がある
受け取るといい…」(アタ)
<ブウウウ…><ボロ><ボロ>
「……」(土産だと…?)(達麻)
<ボロ><ボロ>
僕は達麻がこれまで50年費やして八丸が8人目だというのと、アタさんとニリ姫が8人目の子と言っていたのを重ねて考えてましたけど、よく考えたら達麻は天然物の鍵を探してたの対して、アタさん達は養殖物に走ってたんだから、全く違うものですよね。偶々、8人目の八丸だった…っていうだけなのね。でも、偶々とか偶然って言いますけど、それには何かしらの意味があるものです。僕は仕事ではどんなに小さな違和感であっても、それを偶然で済まさず何でだろう?と立ち止まるよう厳に戒めています。
作品の考察もそれと似てますね。例えば偶発的に八角が発生したとされていますが、それにだって意味があると思うんです。どんな理屈で人工的に「鍵」を拵えたのかは知れませんが、「7つの鍵」の生成において、八丸(八角)の存在が全体のバランスを崩したとも言えるし、逆に八丸の存在があったからバランスできたと考える事もできると思うんですよ。もしかしたら、それは「鍵」の意思だったのかも知れません。それって、考えようによっては八丸が「7つの鍵」の「鍵」とも言えますまいか?
アタさんの話に拠れば、烏枢沙魔流は既に「マンダラの箱」を入手していて、それを元に一角から七角の「7つの鍵」を設計したんじゃないかと思うんです。やっぱ「鍵穴」があって、それを解析して遺伝子操作したとかね。通信でいう「プロトコル」に相当する部分に何らかのプロテクトがあったかで、抑止が働いて八丸が発生したとしたら、もうこれは偶然ではなく必然なのであります。きっと「マンダラの箱」を開ける為の要件として、この遺物を残した不動明王の遺志なのだと、僕は思います。
ま…第一話「1つ目の鍵」を何度も読み返して、箱が二つ存在する事は分かっていましたけど、達麻の感じからすると丸い方が「マンダラの箱」なのでしょう。そして、それはちょっと厄介な存在のようです。だから、達麻としては八丸は死守せねばならん…と。恐らく、「パンドラの箱」と「マンダラの箱」を二つとも集めたら、不動明王みたいな「神」になれるのですね。そして、それが宇宙の覇権を握るのと同義な訳で、これで夜叉さんが抑えてる敵は烏枢沙魔流のボスだと考えてヨカかと思います。
それと剣術(武式)の流派が烏枢沙魔流+金剛夜叉流を含めた4流派…という提示がありましたから、計5流派がこの宇宙を統べる勢力と考えられます。そもそも、ロッカーボールが侍を創り出すシステムが先か不動明王が先かが分かりませんが、少なくとも不動明王は自分亡き後の宇宙の統治を任せるに値する存在を選別する為に「パンドラの箱」と「マンダラの箱」を残したのではないかと思います。しかし、それで多くの人が亡くなり不幸が生まれるのだからもっと別のやり方があったと考えるのは野暮なのでしょうか?
続きまーす!!