サムライ8 八丸伝 第15話 八丸の「義」感想②
「……かつて
武神不動明王に仕える一人の侍がいた
その男…他の流派のどこにも属さず
意を唱え新たな流派を立ち上げる
…それが——
烏枢沙魔流…初代党首
その名は——」(達麻)
「!」(八丸)
「カーラ
星々を簡単に消失させるほどの力を持ち
この宇宙のどこかで今も暗躍し
星々を消し続けている
我ら金剛夜叉流は
カーラを止め続けてきた」(達麻)
「!」(八丸)
「……今もなお
我が師は何世紀にも渡って
奴らを止め続けている
だが…
同志の一人だった侍が
我々を裏切り
カーラの右腕となった…
無比力のアタだ」(達麻)
「何で…敵側に?」(八丸)
「色々あったが
簡単に言うなら私欲のためだ
…アタは強者だった
烏枢沙魔ではさらに力を得……
この銀河の星々を破壊して回っている
拙者は奴らを止めるため我が師より
”銀河を救う力”を秘めた
「パンドラの箱」と
その箱を開けるとされる侍の——
7つの鍵を集める事を託された
烏枢沙魔流は対となるもう一方の箱
「マンダラの箱」をすでに手に入れているようだ
”銀河を滅ぼす力”——を持つという箱だ
もしこの箱が開けられてしまえば
カーラの思惑は成就してしまう」(達麻)
「それ…アタが言ってたやつですよね
不動明王がもってたっていう…」(八丸)
「どちらの箱も開けるには
選ばれた7つの鍵が必要になる
カーラはそれを人工的に作った鍵で開けようとし
失敗したようだ…
…お前の父が…
連れ出し隠したことによってな」(達麻)
「!」(八丸)
「…あいつら言ってましたね…
父ちゃんの事「博士」って…
なんとなく話が見えてきましたよ
…オレは…烏枢沙魔流によって
敵の持つ箱の鍵として造られた…
父ちゃんによって…
オレは銀河を滅ぼす鍵でもあり
同時に——
銀河を守る鍵にもなってたって事か…
…師匠は何でオレがパンドラ…って箱…
それを開けられる鍵を持つ侍だって
分かったの?」(八丸)
「……
師が拙者にこう言った……
目の光を失いこの体になったのも意味があると
拙者は目が見えぬ……
だが時として全てが見える時がある
阿吽がな
お前が侍となる時…
拙者は見たのだ
白い侍魂の刀を持ち
姫と共に力強く立っている
立派な侍の姿を…!
その時に感じたのだ
この子で間違いないと
…侍にはそれぞれ役目がある
それが侍の「義」だ
拙者は箱と鍵を探す事
そしてお前は……」(達麻)
「…オレの事…
信じてくれるんですね……」(八丸)
「お前の目はアタとは違う」(達麻)
達麻の説明によると…武神不動明王という侍が存在していて、その段階で他にも侍が存在し、既に他流派が分化していたようです。侍とはロッカーボールの儀式によりサイボーグの身体を得た元人間ですね。それで流派というのは金剛夜叉流などの侍を括る社会を意味すると言えます。この時点で金剛夜叉流を含む四流派が分化していたかまでは不明です。カーラは不動明王直下の侍で、新たな流派である烏枢沙魔流を創設したとあります。これが最後発とすれば四流派はこの時点で在ったんだろうな…と思います。
それで烏枢沙魔流の頭首であるカーラが宇宙を消し去ろうとするのを金剛夜叉流の頭首である夜叉さんが止めてる…何世紀にも渡って。第一話「1つ目の鍵」の冒頭のアレと繋がったのね。そして、達麻の一番弟子が烏枢沙魔流に寝返ってカーラの右腕という事だからNo.2ってとこですね。でも、ここまでは「カーラ」という名前以外は物語を読み込んでいれば凡そ見当が付く内容ですね。それならば、遥か彼方の宇宙の果てで夜叉さんとカーラさんが剣を交えるワンカットで済みます。その程度の情報に過ぎないという事です。
そして「パンドラの箱」が正六面体の箱で、「マンダラの箱」が球体。「マンダラの箱」は既に烏枢沙魔流の手にあって「合鍵計画」によって「7つの鍵」の人為的な生成が試みられたが七人ではなく八人目の八丸が発生してしまった為に計画は頓挫している…と、これも既出の情報です。何か…これでは作画の間に合わなかった深夜アニメの総集編みたいなお話ですね(笑)。まさか…第一部完ですか!?的な雰囲気が今話は全編を通して流れてて、物悲しい…というか何と言うか…アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ…
しかし…達麻は八丸が「パンドラの箱」の鍵だと認識していますけど、八丸は烏枢沙魔流の「合鍵計画」で造られた「マンダラの箱」の鍵の一部…恐らく「七つの鍵」のそれぞれの要素を少しずつ併せ持った特殊な存在の筈です。達麻は八丸のロッカーボールの儀式に臨場して、その時に「白い侍魂の刀を持ち姫と共に力強く立っている立派な侍の姿」を見たから八丸が「パンドラの箱」の鍵で間違いない!!としていますが、ちょっと強引に感じます。これは…二つの箱の共通の鍵という認識で良いのでしょうか?
でも、何でここで達麻が見えない目で見たという八丸の儀式でのイメージを出すかなー…って、僕は思うんです。何で第一話でもっとボヤッとしたイメージでもいいので出さなかったんでしょうか?あの時、達麻は八丸を「1つ目の鍵」と断じてたのに。それが伏線としてあれば八丸とアンちゃんの出会いだってもっとドラマチックになったでしょうに。今、ここでこんな風に見せられても、そ…そうなんですか?くらいの反応しか出来ません(笑)。この部分の感想が右から左なのも同じ理由です(笑)。
達麻が八丸に「お前の目はアタとは違う」から信じると言ってますが、達麻がアタを弟子として迎え入れた以上はアタさんも八丸の頃にはこういう澄んだ目をしてたんだと思います。これが『NARUTO -ナルト-』のヒルゼンと大蛇丸の関係みたいに「才能」のみに期待してしまった過ちではないと思います。つまり、アタさんはどこかで大きく変質してる可能性があるという事であります。それには十中八九「ハンナ」(第14話「父の秘密」)という人物が関わっているんではないかと、僕は思います。
それは久しぶりに師弟が再会した折の慇懃無礼(いんぎんぶれい)なアタさんが達麻に告げた「バク姫(の件)」(第11話「ふざけたマネを」)と同種のネタです。ここで僕らはどうして達麻が今のように存在して、同じようにアタさんがどうして今のような行動をするに至ったのかに想いを馳せるべきだと思うんです。僕のする作品の考察とはまさにそれでありまして、それぞれのキャラの立場にて立ってみて、必要ならば憑依(ひょうい)して考えるという行為なのです。そこに面白み、旨味というものが在る。
岸本先生の描かれる作品とはそれができる数少ない漫画作品であります。僕はそこに文学的価値すら見出している。作品全編を通した世界観も科学や物理法則のレベルで説明できるレベルで構成されています。若干、それに反する描写もあったりしますが、その時は烈火の如く毒を吐きますけど(笑)。僕は岸本先生と岸本先生の作品の大ファンだから…大ファンだからこそ物申したいのです。何でもかんでもマンセーで妄信的に受け入れるのではなく曇りなき目で作品を楽しみ、曇りなき心で吟味したいのです。
今話におきましては、こんな総集編ぼような既出の情報のまとめをやるんだったら、侍の剣技(の理屈)とか、各流派の存在の意味とかを先に示して欲しいと思います。このお話の中でアタさんが金剛夜叉流を裏切って烏枢沙魔流に移ってから「さらに力を得」と言ってるでしょ。そこには何かしらの理由があると思うんです。そもそもアタさんが無雲に仕掛けた「金剛夜叉流・黙斬り」の理屈も説明されてませんよね。それの説明の為には各流派の意義や意味の提示が必要になると思うんです。
そもそも何で侍である必要があるんでしょうか?切腹して一回死んでサイボーグになって、それでも五体満足の人型になって、刀を振り回す剣術で戦って、金剛夜叉流とか烏枢沙魔流などの流派に統制されて動く必要性…例えば『NARUTO -ナルト-』では「チャクラ」というエネルギーが存在して科学や物理と物語の描写との段差をうまく埋めてリアリティを確保できていました。それと同じように『サムライ8 八丸伝』でも侍として戦う道理というものが必要です。僕はそれが「勇」かな?と思ってたけど違った…(汗)。
そういう説明がないまま、物語が進んでて何だかなーと思ってるのに、ここでまた重複した説明が繰り返されてうんざりです。僕が岸本先生の担当編集者だったら、岸本先生に連載を何週か跳ばして頂いても書き直して頂けるようお願いしたと思います。こんなグダグダな展開で岸本先生の作品を晒す方が忍びないですから。きっと出版社も岸本先生に無理を言って描いてもらってるんだろうなーとは思います。その手前、気安く物が言えないのかも知れませんが、岸本先生のキャリアを汚すよりはマシです。
続きまーす!!(にんにく食べたのでオッチャンの口は臭いぞーッ!!)