サムライ8 八丸伝 第8話「ゆっくりでよい」感想⑦
「八丸に比べれば
お前は立派な姫に見えるがな」(達麻)
「…そ…そんな風に見えるなんて…
し…師匠はめ 目が悪いんじゃな…ないですか?」(アン)
「拙者は目が見えぬ」(達麻)
「!」(アン)
あまりにも達麻が日常生活に困っていないのでアンちゃんは達麻が少しだけ目が悪いと思っていたようですね。まさか見えないとは!!実際、達麻と一緒にいたら僕だってそんな錯覚をしていたと思います。ところで、第一話の冒頭で達麻が夜叉さんの説法を聞いていました。その時、「偶然、そんな姿になったのも何か意味があるのでしょう」と、盲目の招き猫をサラッと夜叉さんに流されてましたが、これは八丸やアンちゃんと同じように、達麻に背負わされた「悩み」なのではないかと、僕は思います。
八丸やアンちゃんのような悩みを皆が皆抱えている訳ではなく、多くはそんなに悩まずに大人へと成長を遂げて行くものなのであります。それは逆に八丸やアンちゃんのような子が少ないけど居るという事でありまして、僕がよく言う「一定数」とはそういう意味であります。要は偏差の問題であり、広範に分布する多数を「みんな」とカテゴライズしているに過ぎません。そして、岸本先生は『サムライ8 八丸伝』において、ぶっちゃけ少数派の悩みを抱える子供達にフォーカスしているのであります。
別に多数派の「みんな」が全く悩みなんてないとは勿論、申しませんが、これも程度の問題で、医療も含めて何らかの支援が必要と思われる案件までございます。八丸は苦手なタイプなのでよく分かりませんが(←冷てーぞッ!!)、アンちゃんには支援の必要性を個人的には感じます。でも、ま…良くしたもんで、僕みたいな困ったチャンであろうと、何とかなるのもまた事実です。しかし、そこまで苦労しなくても一緒にいる大人が理解して支えてあげればいいじゃない!!と、僕は思うんですよ。
願わくば…僕も子供の頃に達麻みたいな大人に出会いたかったなー…と。でも、万事に対して無自覚な子供の頃はそれすら分かろう筈がありませんので、だからこそ、そんな子供らの側に居る大人が気付いて上げねばならんのであります。そして、それを達麻がまんまと実現してくれていて、本当によかったと感じています。本当は…これは親の仕事なのかなー。これも難しい問題。心眼が備わらない一般人は教育論とか児童心理学とか齧るべきなのかも知れませんけど、諸事情を勘案すると、かなり悩ましーッス。
「だが時として
全てが見える時がある
阿吽がな」(達麻)
「……」(アン)
「そ…それって…
わ…わたしの名前の…うんちくで…」(アン)
「阿は始まりを…吽は終わりを意味する」(達麻)
「この2文字の間には多くが混在し
簡単にはつながらぬ事を意味している」(達麻)
「何をするにも
簡単にはいかぬもの
だがそれが当たり前だ
あせる事はないのだ…
そのうちうまくいく
だから…
ゆっくりでよい」(達麻)
達麻の説法が深いですね。子供のアンちゃんにこれが果たしてどこまで理解できるんだか不安ですが、少なくともアンちゃんは自分に目を向けて、耳を傾けて、ちゃんと向き合ってくれる達麻が、達麻の存在そのものが嬉しい筈です。それは達麻がアンちゃんに心を向けているという事であります。ただ見るのではなく、ただ聞くのでもなく、その物事に心を向かわせないと真実には辿りつけません。そして、これはきっと侍が目指すべき「心眼」に通じる、ある種、人の到達すべき境地とも言えましょう。
何だかインチキ侍の説法みたいでアレですが、達麻は真実(阿吽)に到るまでに、その二つの間にいろんな物事が関わると、アンちゃんに説いているのでしょう。この場合、阿吽とはアンちゃんと八丸の事でもあり、その他のいろいろな事共であるのか知れません。これは間に余計なものが挟まっていようと、いつかはそれらが洗い流され真実になるとの教えでもあり、そこに至るのは決して容易くはないという意味も含んでいます。時間や労力が必要だし、すっごくしんどい作業だよ…と、告げています。
つまりは、ゆっくりでよい…。
少年老い易く学成り難し一寸の光陰軽んずべからず…という考えもありますが、アンちゃんの場合は焦って失敗してるので(笑)。僕の場合も多くは時間が解決してくれたように思います。レディネスが整えば、教えられずとも入りますし、或いは過去に知った情報が身に染みるものです。本来、学びとはそういうものであるとも、僕は思います。子供の頃は高くて越えられないと感じた壁が大人になればそうでもなくなるように、多くは時間が解決するので、本当に焦らないでいいんですよ。
…と、達麻はアンちゃんを安心させているのですね。しかし、それはアンちゃんに聞く耳があるからでもあり、恐らく、この説法に八丸は耐えられないでしょうよ(笑)。その意味ではアンちゃんのレディネスを把握した…極めて適切な対応であったでしょう。僕は八丸は苦手なタイプなので、達麻のアンちゃんに対する教え方はすごくよく分かるのに、八丸のは全く分かりません。なので、達麻が八丸をどう導くのか?には、ものすごく興味があります。八丸はアンちゃんと真逆の傾向があるからなー。
まさか、達麻が八丸にケツバットかまして「急げーッ!!」とかやりませんよね(笑)。そんな事したら、ここまでの達麻の見事なまでの大人像が一発で崩れてしまいますやん!!(笑)ところで、八丸の修行風景に葉芽道が身切れてませんね。葉芽道どこ行ったー?もしかして厠(かわや)?次回、センターカラーの扉で衝撃の侍の排泄シーンとか明かされるんでしょうか?僕は八丸の修行に葉芽道が関わって、達麻と八丸の間に入って真実を手繰り寄せる役を担って欲しいなーと願っています。
<ズバッ>(アタ)
「うっとおしい隕石群だ
…まだキューブ宇宙域を抜けられんか…」(アタ)
「ゆっくりはしてられん!」(アタ)
ちょっと良い雰囲気の修行シーンから一転して殺伐としたアタの見開きで今回のお話が仕舞います。アタの言う「キューブ宇宙」って、アタとニリ姫が居た正四面体(キューブ)の星々を指しているのでしょう。そこからボール宇宙…って星が丸いのかな?もしかして…を目指してるようですが、それが八丸たちの住む星じゃなくて全く違う星だったらアレですが、兎に角、急いでるんですね。それはアタが侍魂を核になんたら粒子で作り出した分身体の時間制限があるからなのですよね。
これが、アタがお腹壊して急いでて、偶然見つけたトイレに駆け込んで<ふーッ>ってなるようだったら大したもんですけどね(笑)。それでこそアタ、分かってる!!と賞賛の嵐でしょうが、どデカイ隕石を一閃とかカッコいい!!それだって、本気で急いでんなら華麗なステップワークで避けますけどね…普通。これは相当な短気ですわ。高速道路で衝動を抑えきれずあおり運転するDQNなんじゃない!?(笑)それで「ゆっくりはしてられん!」とな。直前のほのぼのした感じとギャップあるわー。
しかし、僕らはこういう荒々しい侍が躍動する…刀を振り回して勇ましく闘うシーンが見たかったのですよね。岸本先生にしてみれば、僕らが望んでるのだから「どうぞどうぞ!!」で描かれたんじゃない?…てか、もしかして、岸本先生もエゴサーチとかしてるんじゃない!?「岸本斉史 八丸伝 説明 多い」とか「サムライ8 耐えられない 展開 遅い」とかでググってませんかね?!それでこんなカットを見開きで差し込んで来たとかね(笑)。僕も言い過ぎたと反省してますけど…(笑)。
岸本先生のエゴサ検索ワードを検討するスレが立ったと聞き及び…(うそ)
第8話「ゆっくりでよい」 ケルベロス 了