サムライ8 八丸伝 第9話「ふたりで…」感想⑧
「これ初めて食ったけど
めちゃくちゃうまいな!!」(八丸)
「……は…八丸くんて…」(アン)
「ん?」(八丸)
「さ…侍様…に…
なったばかり…な…なの?」(アン)
「ん…!
あ…ああ!」(八丸)
「そ…それ…なのに
道場…や…破りをや…やっつけたん
で…でしょ?
つ…強いって皆が
ぅ…うわさ…し…してたよ」(アン)
「ま~~なァ!
オレ強いんだな!!
これがさ!」(八丸)
「は…八丸くんは
武士の…か…家系?
ど…どこの道場に…所属し…してるの?
む…む…昔から強かった?」(アン)
「…実はオレ…
む…昔から
活発なガキでさぁ~~!!
そら強かったのよ!
道場の仲間から
神童なんて呼ばれちゃってさーー!」(八丸)
ロッカーボールの発掘で穴の上から八丸を見つめるアンちゃんの瞳が曇って見えましたが、アンちゃんは元気一杯、闊達な八丸を見ていると劣等感に苛まれるんじゃないかと思いました。アンちゃんは普段の生活でも自分と他を比べて言いようのない違和感を絶えず感じてると思うんですよ。しかし、子供の頃ってアイデンティティが確立していないので、ちょっとした事で自分の存在が揺らいでしまいます。ましてやちょっといいな…と想い始めた八丸も自分とは全く違ったら切ないでしょうね。
しかし、よくしたもんで八丸だってついこの間まで生命維持装置に繋がれた不遇の子でしたから、比べちゃいけないけどアンちゃんよりも制約が多うございました(笑)。大体、子供の頃の悩みとはそのように自分の中のフィクションがノンフィクション化した架空の産物であり、気にしなくていいのですが、そうできないのよ子供の頃って。でも、本当にそういった数々の問題も時間と共に、成長と共に霧散して行きますので。僕は小学生の頃、オバケが本気で怖かったけど今は怖くないしね(笑)。
そんなアンちゃんがいろいろと八丸に質問してますが、心の奥底を掘り返された感のある八丸がここで虚勢を張ってしまうんです。これも分かる…というか、さっき八丸の穴掘りを見てたアンちゃんの気持ちが八丸に乗り移ったようで、2人がそんなに変わらない普通の子に僕には感じられました。不安とか、劣等感とか抱えたどこにでもいる子らですよ。でも、それが孤立していますし、コミュ力が備わっていませんからね。情報を分析する力も乏しいですから、そもそも情報が少ない…し。
大人にはそんな子供らを「時間が解決する」としかアドバイスできないのが悔しく思えるんです。でも、何を説明しようと、それを受け入れるレディネスが子供らにないから、お互いに空回りしてしまうのです。子供の頃、勉強しなさい!!と口を酸っぱくして叱られたけど、あの頃勉強してれば…とオッチャンは後悔してますんで、この問題は未来永劫ループすると思われます。だから、自分の近くに居る子らがどうなろうと、ずっと見守って、ずっと愛し続けるしかないのかな…と思う今日この頃です。
実はこの時、八丸はビッグチャンスが訪れていたのに気付いた方はいらっしゃいますか?アンちゃんは自分が感じてる劣等感を背景にして、勇気を出して八丸にあれこれ質問しているんですよ。ここで八丸も勇気を奮って、ついこの間まで生命維持装置に繋がってました…とか、実は先端恐怖症で、しかも引き篭もり同然の生活を続けてて、ボッチでーす!!とか洗いざらい自白できていれば、これは「秘密の共有」と呼ばれる心理的ニックでありまして、2人の距離が一気に縮まったのにね(笑)。
これは心を開かない容疑者の取り調べなんかに利用される心理テクニックなんです。お前と俺は同じなんだぞ…といった刑事の告白が容疑者に親近感を与えるのですが、八丸がここで自分の秘密をアンちゃんに打ち明けられたら、帰りはネオンサインがキレイなお城のような建物に早太郎のウィンカーが<チカ><チカ>と点滅してたかと思うと悔しいです(笑)。でも、少しずつではありますが、確実に2人の距離は縮まっていますから、もう少しだよ!!アメリカンバッファロー達!!(笑)
「…よ……よかった…」(アン)
「え?」(八丸)
「は…八丸くんは
わ…わたしとは
ち…違って…才能がある
う…運命のさ…侍様がそ…そうなら…
わ…わたしを…引っぱって…いって
く…くれそうだ…から
…?
ど…どうかし…した?」(アン)
「イヤ!…あの!
タ!タコ焼き!
…買って帰ろうかなって!
師匠とハガミチさんの…
せっかくだし」(八丸)
<スッ>(アン)
「!」(八丸)
「……い…いざ」(アン)
「……」(八丸)
八丸がアンちゃんに本当の事が言えなくて辛くなってしまったんですね。アンちゃんとの楽しいデートなのに話しをはぐらかすようにタコ焼きに走りましたね(笑)。しかし、この子らよく食べますね。アイスクリームみたいのも食べてたし、どうしてもトイレが気になります(←ケルベロスはそればっかな!!)。特にアンちゃんは生身の女の子ですし、トイレに行くの我慢してたりしませんかね。八丸もそういうところは気を遣って、アンちゃんが小さなポーチ持ってても見えないフリしないとね(笑)。
ま…そういう細かい気遣いができるくらいなら、もうとっくにアンちゃんと懇ろになれてる筈ですし、アンちゃんの心も急速に開かれて来ました。タコ焼きを買った後、帰路に就く頃にはアンちゃんが八丸の口癖を真似て自分から手を出しています。まだまだぎこちないけれど、少なくともアンちゃんは「デレ」に傾いています。喋りも徐々に滑らかになってますよね。何より積極的に八丸に話しかけるようになったし、アンちゃんの表情が明るいですよね。なんか甘酸っぱい香りが漂いますよね。
八丸ってメガネが似合いますよね。ロッカーボールの捜索に出発する時に<カチャ>とメガネをセットしましたが、なかなかイケてると思いました。アンちゃんにもそれが「弱っちいインテリメガネくん」とも映っていないようですし、2人が出会ってしまった時点で恋は既に始まってましたからね。恋はそこにあるものですから…これはナル×ジャンの恋愛論で書きましたっけねー。「オビトは何故、”目薬”をさしていたのか?」という考察なんですが、ハチマルの読者様にも是非読んで頂きたい!!
当時としてはNASAの最先端技術なども大活躍の考察です!!(笑)あの頃、すごく絵が上手なウィリアムさんのご好意でイラストをお借りしたり、共同の企画でイラストを発注させて頂いた記憶があります。コミケにも僕は行かないし…。それより友達付き合いが下手で続かないんですよ。ウィリアムさんともあの時以来連絡を取っていませんが、お元気でしょうか?また一緒に何か面白い事ができればいいな…と思っております。『サムライ8 八丸伝』は読んでますか?僕はすごく元気ですよー!!
あ…ダメ、懐かしすぎて涙が。歳を取ると涙腺が脆くなっていけない。話しが逸れちゃいましたが、ナル×ジャンの恋愛論はどれも僕の自信作なので、もしお時間があるようでしたら読んでみて欲しいです。岸本先生の作品の中でも戦場のボーイズラブ…じゃなかった…戦場のボーイズライフはガチガチの鉄板の名作ですんで、僕の考察と合わせてまだ読んでない方は岸本先生の本編もお読みください。女の子の強さちゅーか、恋愛の残酷さっていうの?切なくて甘酸っぱいよなー。
第9話「ふたりで…」 ハチマル ケルベロス 了