サムライ8 八丸伝 第22話 アンと兄 感想④
「ブ…武神不動明王様の下にあるのが
ロッカーボールだ!
それに入っている短刀で「切腹」すると
さ…侍になるんだ!」(七志)
「ここは一般にも公開されているが…
そのボールには触るなって書いてあるだろ
君ら何だ?」(葉芽道)
「!!
黒狼の葉芽道だよ!アン!
そ…れにウーン姫だ!」(七志)
「…?」(アン)
「葉芽道様
私たちも有名になったみたいだね」(ウーン姫)
「オ…オレも侍になりたいんです!
い…妹は姫に!」(七志)
「あのね……
侍になるにはまず武士にならないとね
その武士の中からロッカーボールに適合するかどうか
大姫様が見定めるの
大姫様に選ばれたなら
99%で適合できて侍になれるけど
こればっかりは運…だから
あせっちゃダメよ!」(ウーン姫)
「は…はい!」(七志)
一個前の感想でこの世界の歪な構造を考察してみたんですけど、それを踏まえれば葉芽道とウーン姫が孤児の兄妹を目の当たりにしても全く後ろめたさも責任も微塵も感じていないのが納得できました。侍がこの社会の一切合切を支えているんですから、侍と、侍を生産するロッカーボールを見出せる姫以外は人にあって人に非ずの社会通念なのでしょう。この二人にしてみれば武士でも姫見習いでもない子供らは取るに足りない存在でありますから、七志のほっぺの傷を間近で見ようとも、それに一切頓着せず放置できる非道さが身に沁みます(笑)。しかし……なんて悲しい社会なんでしょうか?
僕はこれを見ててアタさん達がこん銀河を吹き飛ばして更にしようとしてる方に乗っかりたくなりました。もしかしたらアタさん達は不動明王がロッカーボールを発明して宇宙にばら撒いた事によって科学技術(錬金術)と知性のバランスの乱れた世界を正そうとしてるんじゃーないですかね。僕の目には明らかに七志とアンちゃんは不幸に映ります。こんな世界はダメだと思う。それを正して「あるべき姿」にする為にロッカーボールとそれによって生産される侍を無に帰そうとしてるんじゃないでしょうか?その方法が「マンダラの箱」に書かれてるとかね。
普通にサラッとこの物語を読んでると夜叉さんや達麻ら金剛夜叉流が「善」で、カーラさんやアタさんの烏枢沙魔流が「悪」みたいに感じるだろうけど、侍とロッカーボールテクノロジー(錬金術)に支えられたこの世界の既得権益にしがみつくのが金剛夜叉流で、それに異を唱えるのが烏枢沙魔流という見方をすればそれが180度変わります。僕が思うに、「合鍵計画」とか実行できる烏枢沙魔流って独自の科学が存在するんじゃないですかね。それは知性があるという事で、その知見からすれば七志やアンちゃんみたいな孤児を放置して何とも感じない社会なんて異様であり得ない訳です。
そもそもあからさまに悪者的に描かれるカーラさんだけど、凄腕のプログラマー(ハッカー)で不動明王のコーディングしたロッカーボールテクノロジーの解析をした結果、烏枢沙魔流という既存の四流派(金剛夜叉流、降三世流、軍荼利流、大威徳流)とは全く違った流派を生み出せたんじゃないでしょうか?そして、侍中心の社会ではなく人間中心の社会を考えた時に、ロッカーボールテクノロジー(錬金術)が社会に齎す弊害を看過できず、星々に散らばってしまったロッカーボールを一掃すべきと考えたんではなかろうかと、僕には思えるんです。
だから、それを邪魔しようとしてる金剛夜叉流って、そういう意味では「悪」だよなーと思えます。そう考えながらもう一度、忠道場の不動明王のお堂に現れた葉芽道とウーン姫を見ると、如何にも何処かのお城みたいな建物で一戦終わらせた後みたいに満足感たっぷり…ウーン姫のウットリした感じがめっちゃ胸糞悪いです。それに葉芽道はこの時、アンちゃんに出会ってるんですよね。それなのに数年後(7〜8年くらいかな?)再会したアンちゃんと初対面以外考えられない関係性を示してたので、十中八九…いいえ!!…1000%忘れてますね(笑)。彼にとって二人の孤児はもう完璧に路傍の石なんですよ。
ウーン姫が子供らにすっごく顔を近付けて話してるのに七志の顔の傷に全くもって頓着してなくて草。もーこいつオルガスムスの虜なんだわさ。こんなクズが少なくとも赤木城で姫様気取ってるとか、もうこの世界…救いようのないクズなのでさっさと烏枢沙魔流に吹き飛ばされた方がよろしいかと思います。何も学べないで不幸を不幸と認識できない子供らが存在する社会なんて無くていいよ。ウーン姫が七志(とアンちゃん)に少なくとも武士でなければ必要ないの的に教えるのが胸糞悪くて吐きそうです(笑)。
もっと酷いのはウーン姫かも(笑)。八丸と一緒に八丸の姫として星を旅立つ時にも、七志という兄の存在を1ミリも…いいえ!!…1ミクロンも示さなかったのだから、この期の出会いは忘却の彼方でしょう(笑)。きっとその記憶はアンちゃんが姫見習いとして自分の管理下にあった時も呼び起こされることはなく…(笑)。如何にも侍と姫のみの社会を生きる二人には似つかわしい反応でしょう(笑)。一方、アンちゃんはこの事を覚えてたんですよね。これってアンちゃんの回想ですからね。でも、それに重い蓋をしてましたからウーン姫に自分から告白する事もなかったでしょう。
そもそも今までアンちゃんのお兄ちゃんの存在が一度も出てないのが異常なんですよ。物語のセオリーとしてもあり得ないし、アンちゃん以外の関係者の心の片隅にすら残っていないんですから、物語以前にこの世界に住んでる知的生命体としての葉芽道やウーン姫の品性を疑います(笑)。こんなの明らかにクズ…クズ以下じゃないですか!!??(笑)ま…惜しむらくはアンちゃんがあの星を旅立つ時にお兄ちゃんである七志のお墓か仏壇の遺影に別れを告げて欲しかったんだけど、それも記憶に重い蓋がのし掛かっててできなかったんだよね…そうだよねーアンちゃん(小声)。
続きまーす!!