サムライ8 八丸伝 第35話 侘び寂び 感想⑦
「はぁ………」(達麻)
「ハイ出た!その顔ホラ!」(八丸)
「まだ……
拙者が箱の存在を見ようとしていないという…
事ですか?」(達麻)
「それに近い
大切なものは目に見えぬ
まやかしが本質を曇らせる」(不動明王)
「達麻よ
お前は人でもあり
猫でもある状態だ
お前を人と見るか
猫と見るか
※この二つのカットの人の達麻と猫の達麻の見せ方がとても上手いなと思いました。岸本先生のコマ割りがアニメーションの表現手法の影響を強く受けてるのを感じますが、これは漫画的な表現だと思います。何も考えずに読み進めていても頭の中でこのシーンが自然に再生されます。地味だけど非常に効果的なアイデアだったと思います。素敵!!
お前の両面を知っていれば
どう見ようとするのかは
その人によるのだ」(不動明王)
「…箱は見えていた
だが箱であると見ようとしなかった
そういう事ですね」(達麻)
※達麻のちょっとズレた返しが可愛いです(笑)。
「どう見えるかだ
まだまだ心眼が足らぬ」(不動明王)
不動明王の語録の破壊力が凄過ぎて意識を持って行かれそう…(笑)。でも…出るわ出るわの最強語録!!別に狙った訳じゃーないんでしょうが、週ジャンに「語録漫画」という新しいカテゴリーを生み出して、それが大きなムーブメントになってますから、ある意味、エポックメイキングな作品だと言えます。また、これまでのお話と比べても今話は一味も二味も違います。しっかりと「SF」してるんです。まー雑なところもありますけど、第17話「コツガとリュウ」(ちな…この時は二人の名前がカタカナ表記だったんだよなー…)の説明も腑に落ちて好きだったんだけど、今話の説明は更にその上を行ったと思います。
まー今話は若干の力技はあったけど充分納得しました(笑)。お話がピリッと引き締まったよう感じられて非常に良かった。こういうのが描けるんだから、もっと早く出せば良かったのに!!と思うのですが、逆にこれ出しちゃったらもう仕舞うしかないじゃん!!とも思えて、一瞬、トンネルの出口に広がる雪国の光景が…(笑)。これは映画「マトリックス」のクライマックスの直前にネオ(トーマス)を覚醒に導くプロセスと凄く似ていると思います。もうかなり前に観た映画だから記憶が怪しいけど、今話を読みながら何故かそう感じました。そうしてると何だかまた「マトリックス」が観たくなって来るから不思議です(笑)。
今話でも不動明王が達麻と八丸に説法を重ねてこの世界=不動明王が創世した宇宙の構造を理解させようとしています。僕も何度も読み返してたら何となく分かっちゃったもんね(笑)。なーんだ!!そういう事かって!!(笑)でも、ここで本当に達麻と八丸がそれに気付いちゃったら「箱」を探し出して開けちゃうからお話が終わってしまいます。下手したら「箱の鍵」とか全く関係なくなる可能性だってあるからねー。折角、はぐらかしの最強語録を引っ提げて不動明王が登場したって~のに終わらせちゃったら身もフタもない!!35話目でやっとエンジン掛かったんだから!!って、僕は誠に複雑な心境なのです。
一時は「はよ終われ」(84080)とまで思ったのに、いざ終わりの匂いが漂うと途端に侘しくて寂しくて(笑)。ま…不動明王の仰る通り、僕にもまた「まだまだ心眼が足らぬ」という事だったのかと、不動明王の最強語録に打ちのめされちゃった訳だ(笑)。ところで、達麻が何で猫侍かっつーと、烏枢沙魔流に猫の姿になっちゃうウィルスソフトを打ち込まれたか何か原因なのですよね。しかし、達麻がここで自分は「人だ!!」と強く信じ、達麻がそれをイメージできれば、達麻に掛けられた呪い(というプログラム)を上書きできるのだ、と不動明王は仄めかしているのですよね。
達麻は自分が目が見えない猫だ!!と思い込んでいるに等しいと不動明王は達麻に教えているのです。この世界では別にキーボードを<カショ><カショ>と打ち込んでプログラミングするのではなくイメージがプログラムとしてパッケージ化されるような仕組みなのですよね。別に不動明王がキーボード叩いたっていいんですけど、寧ろその方が僕好みですけど、きっと頭で思い浮かべたイメージが世界を書き換えていける…何故なら侍はh粒子に対する感受性とそれに関与できるスキルを与えられています。不動明王はそれを達麻と八丸にかなり明確に伝えてるのだけど、どう落とし込まれていくかは神のみぞ知るところ…。
結局、達麻が自分はイケメン侍で…と信じ切れれば烏枢沙魔流に掛けられた呪いは意外と簡単に解けてしまうんじゃーないかと思います。きっとそれは「マトリックス」の最後に主人公のネオがそれまで苦戦し続けたスミスらを軽〜くうっちゃって、勢い空まで自由に飛んじゃったみたいに、達麻や八丸もこの世界の成り立ちをちゃんと理解してまやかしが曇らせた本質を見出して、二人が探し求める「箱」や「鍵」も嘘みたいに簡単に見つかって、次の次の回くらいで<サクッ>と大団円を迎えてしまうのではなかろうか?と、非常に複雑な気持ちなのであります。
続きまーす!!