ハチマル

週刊少年ジャンプで連載中の『サムライ8 八丸伝』を考察するブログです。

サムライ8 八丸伝 第2話「空からの訪問者」感想⑤

「侍なんだ!!!

これから流星の不動明王みたく
銀河をまたにかけて大活躍すんだよ!
おれが次の流れ星なっ!!
よろしくな!!!

つっても今日がその初日だけど…
お前の名前は?」(八丸)

「……」(名無し)

「…これ以上は無理だな
だから右手のオレが話す

確かにこいつは
侍になりたいと思ってるが
本当は無理だと分かってる」(右手)

「……」(八丸)

「その証拠に
訓練どころか刀を鞘から抜いたこと
一度もねーのさ」(右手)

名無しくんの部屋を見てみるとなかなか広くていいお部屋です。大きなシェルソファーに一人がけで、ソファーの手すりがコンソールになってて部屋の隅のベッドで寝る以外はほとんどここで過ごしているんじゃないでしょうか。洗濯物は洗濯カゴに放り込んであったりして、これは家事をしてくれるホルダーがいて洗濯から乾燥までやってくれるのかも。また通販の買い物が段ボール箱を開けたまま置いあって、少なくともお金には困っなさそうで裕福そうな引き篭もり生活を感じさせます。

そして、一際異彩を放つのがソファーの正面に置かれた日本刀でしょうか?ちゃんと刀置きに鎮座する刀を名無しくんはいつも眺めていたのでしょう。しかし、その刀は一度も鞘から抜かれた事はない…そう語る名無しくんの右手の存在。ま…名無しくんの登場からめっちゃ気にはなっていましたが、名無しくん右手左手おしゃべりできるゲームのコントローラーですね。これとVR風のゴーグルが侍ゲーのインターフェースと考えていいでしょう。

この世界のテクノロジーは非常に進んでいてホルダーと呼ばれるロボットがかなり高度に仕事を分担できています。当然、AI人工知能)を搭載していて学習しながらプログラム補完・拡張している筈です。名無しくんに語りかけたり右手左手で口喧嘩したり、高度な会話を成立させるくらいの技術は朝飯前なのではないでしょうか。若干、その会話すら名無しくん操作してて(腹話術では無く)機械的に発声させてる可能性も残すけど名無しくんのいい話し相手に変わりはない。

右手お父さん左手お母さんぽいなと思いました。もしかしたら別の部屋でお父さんとお母さんがいて通信で会話しるのかしら?とも一瞬思いました。そしたら早太郎を撃ち落としたのはその二人だったりするけど疑いだしたら切りないのでこの辺で(笑)。でも、ま…名無しくん武士に憧れてはいるもののこの部屋から出れずに踠(もが)いているのだけはよく分かる。八丸肉体的に、名無しくん精神的に、その想い抑制されていた…とも。

「…なんだ
やる気ねーのか…」(八丸)

「……左手の私にも
言わせてくれる?
この子はね…ここに物心つく前に
連れて来られてね
昔の事はよく知らないの
…だから
名前も無くてね…」(左手)

「じゃあ今の名前は?」(八丸)

「名無し…
そう皆に呼ばれてるわ」(左手)

「名前なんて自分で決めちまえばいいだろ?」(八丸)

一コ前の考察でアイデンティティってのに触れましたけど、ケルベロスの世代「新世紀エヴァンゲリヲンで散々学んだネタであります。簡単に申しますと「自己」「他ならぬそれそのもの」認識する事です。近々ではプロテニスプレイヤーの大坂なおみさんが国籍に関するイヤラシイ質問に対して「私は私」キリリと答えたアレですかね(ケルベロスは大いに拍手して彼女が凄く好きになったのだ!!)。えっ!?…逆に分かり難くなったって!?(汗)

このアイデンティティを説明する為に「他ならぬ…」という件(くだり)が存在するところに注目するといいかも知れません。そうなんですよ!!「自己」っていうのは「他ならぬ者」つまり誰か=他者が存在する必要があるんです。この世界に一人ぼっちだとアイデンティティなんてのはそもそもないのです。そして誰かが居るから自分が居る…それを認識した上で「自分は自分」と言い切れる「自信」(拠り所)こそがアイデンティティなんだと、ざっくりですが…僕は考えています。

名無しくん右手左手が侍ゲーのコントローラだと思うんですが、それが何らかの仕組みで喋れる特別な仕様なのは、きっとこの部屋から出れない名無しくん「誰か」を与えたいと思った…名無しくんを愛する誰かが与えたモノだと僕は考えています。もし名無しくんによく喋る右手左手がなければ本当のひとりぼっちであり、「自己」(自我)の存在すら危うい状態に陥ってしまいます。その状況を阻止しようとする…これこそ愛の所業であろうと、僕は思うのであります。

ホントに微妙に右手・左手パペットマペットの名無しくんの一人芝居の可能性もあるんですが、名無しくん裕福そうな引き篭もり生活を見るに名無しくん愛する人の存在がどうしても否定できません。そして、そんな名無しくんの前に八丸という「誰か」が現れた事で名無しくん人生が大きく動き始めようとしています。この出会いをモノにできるか否かが人生の大きな潮目になるのです。それを「一期一会」と申しますが、長くなるので別の機会に(笑)。

自分以外の誰かの存在があって初めて確立する「自己」ではありますが、他者に依存する「自己」は非常に脆弱な存在なのです。エヴァに登場する少年少女が踠き苦しんでいたのは正にそれで、『サムライ8 八丸伝』を共に味わうケルベロス同胞(はらから)である少年少女諸君には是非とも他者の存在に左右されない自己の確立(自己同一性)成功していただきたいと老婆心ながらケルベロスは祈っています。そのお手伝いができるならこの老犬ケルベロス本望なのであります!!

「自分の性別も分からなくて
決めかねてるぐらいだから…
男名女名
どっちを名乗りたいのかも分からないのよ」(八丸)

「…生えてりゃ男じゃねーの?
無きゃ女で…違う?」(八丸)

「お前…両手以外話し相手は?
しゃべり変だぞ!」(八丸)

「いない…
引きこもってもう長いから…」(名無し)

「…!」(八丸)

名無しくんの生活を見る限り決して一人ぼっちで成立する筈がないのですが、幼い名無しくん気付けずにいたのかなーと思います。名無しくんが部屋から出られずにいたのも名無しくんが真面目過ぎたとか臆病だったとかいろんな事情もあったでしょう。八丸はそんな名無しくんと話す内、僕が感じるような違和感に気付いていくんです。描写を見てると分かると思いますが、八丸目がまっすぐに名無しくんに向いています。この様な、その人をよく見るという姿勢が大切なのです。

八丸名無しくんの言っていることがよく分かっています。それに対して目を伏せて八丸を見ない名無しくんコントラストそれぞれに対する理解深さの違いを物語っているところに注目してほしいと、僕は思うのです。八丸名無しくん心を向けているのです!!名無しくん外見に邪魔されずに、その奥底に隠れた大切なモノを見る為に!!これが『サムライ8 八丸伝』のテーマの一つ(と勝手に僕が決めました!!)である「心眼」なのだと、少年少女には是非とも気付いて頂きたいのであります!!

ホントは少年少女自身に見つけて貰いたいから、こういうことを簡単に口にしてはいけないのです…もの凄く大切な事なので。でも、きっといつか「そんなの分かってるよ!!」と言ってくれると信じています。そんな日が来たら嬉しいなと、僕は思います。考察とは地面を掘り返して遺物を探す発掘に似ています。重機で一気に掘ると大切な遺物を壊してしまうから小さなスコップで少しずつ掘ります。何か見つけたら最後は刷毛で土を払う。非常に繊細な作業です。

でもそうして見つけた遺物はきっときっと少年少女の宝物になる!!と僕は思うのです。今、このキャラクターは何を考えているのだろう?どうして彼はこんなことをするのだろう?そういった物語の細かな描写心を向けて、目を凝らし耳を欹(そばだ)てる。見えないモノを見出し、聞こえない音を聞く。それは恐らく人のみに与えられた尊い行いでありましょう。そして、そうした発掘した土塊や遺物の数々がきっと皆さんの豊かにする。

 

何て素晴らしい事か!?(余談が過ぎるぞーッ!!ケルベロスッ)

 

「も…

もしかして君がァ…!?

ウソでしょ!?
まさかあのh a c h I m a r u!!?」(名無し)

「こっちもまさかとは思ったけど
やっぱお前だったか!!
このシリーズの通信対戦じゃ
お前と1億戦以上はやったよな!」(八丸)

「…君 だったのか………」(名無し)

「そっ!
オレがランキング1位の八丸だ!
で…約束は守ってもらうからな
ランキング2位!」(八丸)

「……

きっと同じ様な奴だ
そう…思ってたんだ…」(名無し)

「?」(八丸)

「勝手に親近感まで抱いて
でも違った……違い過ぎた」(名無し)

「いや…オレも昨日まで
引きこもりだったけど」(八丸)

八丸かなり早いタイミング名無しくんが侍ゲーで対戦した誰かと勘付いていましたね。それで賭け対戦を持ちかけた筈です。1億回以上も対戦したって事なので名無しくんが抱いていた親近感を同じ様に八丸も抱いていたのは想像に難くないです。しかし、この星の侍ゲーのNo. 1とNo.2がいきなり揃うなんて、凄い偶然!!…ってもしかして早太郎を撃ち落としたのって達麻?!そういえば浪人侍の鎧を吹き飛ばした飛び道具か剣術達麻にはありますし…(黒汗)。

  • この辺りの八丸の表情がすごく効いてる!!ここは大久保先生を褒めてあげて欲しい!!褒める…て言うのが不遜と感じるなら、上手い!!と感じて欲しい。八丸が向かってる先が明確に分かる!!漫画の教科書があったら載せるべきレベルだと、僕は求め訴えたい気持ちでいっぱいです!!

僕は豚さん達の戦車の祝砲(流れ弾)が偶然早太郎に命中しちゃったと思い込んでいたけど、案外、黒ーい達麻狙撃したのかも知れませんね。早太郎も無事だったし、そんな運良く名無しくんの住まいの屋根突き破ってみんな無事で…って都合良すぎますもん!!きっと八丸に当たらない様に、早太郎もカスってバランス崩す程度にうまく狙って、ネトゲの情報から個人情報抜ける立場達麻がいても不合理じゃありませんから、八丸名無しくんを出会わせたのは…きっとゴルゴ達麻

「オレはさ
今日初めて外に出た様な
もんなんだけど
何かにぶつかって空から落ちるし
愛犬とはぐれるし…
イヤな事もあったけど…
いい事もあったぞ」(八丸)

「……何?」(名無し)

「お前に会えた

ずっと会ってみたかった奴に
いきなり会えたし
あっ…それって初めて同年代変ッ……
おもしれェ友達ができたって事な!

ずっとほしかったもんの1つが
いきなり叶った

この調子なら
あしたあさってしあさって…
ワクワクしかしねェよ!

ありがとな」(八丸)

八丸名無しくんの対戦が始めってから右手・左手沈黙しています。そして、対戦が済むともう名無しくんコントローラーすら外してしまっています。それと同期する様に名無しくん八丸にしっかりと向いている事に気付くと思います。名無しくんかわいい顔しています。前歯がカワイイ!!こんな子がウチに迷い込んできたら一緒に料理作って美味しいもん食べてケルベロスはとても嬉しいですけど。何で名無しくんが女の子に不人気だったのか?不思議です。

それと沈黙する右手・左手さんですが、やっぱ名無しくんセルフっぽく思えてきました。つまりパペマペ的な存在名無しくん生存本能が作り出した幻影名無しくんの世界における擬似的な他者を構成して辛うじて名無しくん自我を維持させていた…って事なのかも知れませんね。ややこしいけど(笑)。この辺のお話はナル×ジャンのアイデンティティ論で死ぬほどやってます。ケルベロスに言うなら「自分で自分の親になる」と言うやつでけど…それはまた別の機会ですかね。

ま…何にしても名無しくんも外に出れたし、八丸友達になれそうだし、墜落して行方不明だった早太郎も合流できたし、ちょうどいい感じの悪者も二人に近付いているし、「不思議な侍の玉」も二人の近くにありそうで、名無しくんの覚醒不動明王の試練への下準備は全て整いましたね。名無しくんになっちゃえば長い長い引き篭もり生活で全く鍛えていなかったフィジカル(身体能力)なんて全く関係ありませんから!!こりゃー豚さん一味フルボッコ確定ですな(笑)。

僕も明日明後日明々後日…もうワクワクしかねーよ!!そして、こんなお話を何度か繰り返して八丸仲間が徐々に増えていく!!ああ…思い出すなー「サスケ奪還編」とか…。毎週、月曜日が待ち遠しくて震えた夜。日曜の12時きっかりに駅前のコンビニに走った同胞も多いことでしょう!!あの日常がまた帰って来たのですね。こうしてまた皆さんと同じ作品盛り上がれる日が来ようとは!!老犬ケルベロス喜びの極みであります。

 

 『サムライ8 八丸伝』がうまく続きます様に!!

 

   ケルベロス