サムライ8 八丸伝 第4話「親子ゲンカ」感想②
「外は危険がいっぱいだ!
現にオレは殺されかけただろ!?」(パパ)
「外に出て
それを救ったのは
オレだろ!!」<ズイッ>(八丸)
<ぬぐぐぐ…>(パパ)
<ズン…>(八丸)
「はぁ~~~分かったぞ
移動型の生命維持装置を
何年も完成させなかった理由…
最初からそんなの造る気
なかったんだろ!?
現に父ちゃんは縛りつけられてなんか
なかったからな!
オレの気持ちなんて
少しも分かんねーか!?」(八丸)
「……」(パパ)
「……」(八丸)
「一回でもいい…」(八丸)
「?」(パパ)
「もし自由に空を飛べるなら
死んだっていいって思ったことあるか?」(八丸)
「……」(パパ)
八丸の帰宅でパパが黒いオトナのアレなお話を聞かれたくないらしくて様子が変です。それにイライラしている…。一つには八丸が侍になって急にアクティブになってしまったのが、パパとしては慣れないのがあると思います。今までだったら八丸は生命維持装置と背中をチューブで繋がれていてパパの目の届く範囲でしか行動できませんでした。それが急に空まで飛んでしまって…。それに段々分かってきますが、パパは八丸を守るべき存在と強く意識して生活してたんですね。
それが空まで飛んでしまって、おまけに鍵侍にまでなったのだから、程なく近所で噂が立ち始める筈です。ま…あれだけ大げさな生命維持装置に繋がれて生活してる子もかなり目立って下手したらTVの取材とかあってもおかしくないですけど、そこはうまく誤魔化してひっそりと生活してたのでしょう。もっとも八丸が元気で活発な生活を送れるようになったのはパパの苦労も一部報われ、非常に喜ばしい事でありますし、八丸本人の幸せを考えたらパパも本望なのです。
しかし、これも深い事情があるのが徐々に提示されて行きますが、パパは八丸をあまり目立たせたくないのです。なのでパパは今の状況にかなり混乱している訳です。パパはそういう複雑な心持ちでいるのに、それを知らずにはしゃぐ八丸にイライラしてしまう。パパは八丸のありがちな気持ちも理解できるので二重に辛いのです。そして、それにとどめを刺すように八丸が移動式の生命維持装置に触れてしまいます。これはパパ的にも痛いところだったようで久しぶりに…
黒バックの回想シーン…と(←あーッ!!懐かしすぎて胸熱だわ)
「…お前も乗ってみたいか?」(パパ)
「!
……」(八丸)
「え?何言ってんの?
こ…こんなの全然乗りたかないね!
オレはこんなダッセーのに乗りたくないんだ…!
オレはゲームが好きで――…
こんなのに乗って喜ぶガキと
一緒にされたくねーんだよ!
お金をくれてもお断りだね!」(八丸)
「……そうか」(パパ)
「そうだよ!」(八丸)
八丸はゲーム好き…というか、ゲームくらいしか楽しめなかったんだと思います。そしてゲームをしてない時は動画サイトで好きな動画を見たりしてたんでしょう。きっと、かなり頻繁に空を飛ぶ乗り物を喉から手が出るような気持ちで見入っていた…。これを間近で見ていたパパが八丸にそれを与えたくない筈がありません。それが可能なテクノロジーが存在し、恐らくはそっち方面に明るいパパですから八丸の為にそれを拵えてやろうと考えるのはひどく自然な事じゃーありませんか!!
しかし、八丸はその気持ちを隠します。ガキっぽいとかダサいとか言って…。きっと八丸も生命維持装置や八丸の日常を支えるのに膨大な費用が掛かっているらしい…非常に子供らしくない気兼ねがあったのだと思います。八丸は子供ですが、どんなに子供であろうと、その中に大人な部分というものは少なからず存在するものです。子供の中の大人がお金の事とか、自分の病気や将来を心配させたりします。子供は外見が子供なだけで、その中身には大人が混ざっているのです。そして、それに気付けるのがオトナで、それは大人とは違うのがケルベロス流であります(←ややこしーわッ)。
- 忘れもしません!!僕が幼稚園児の頃。僕はあの頃からケルベロスと名乗っていましたが(笑)、切り絵のお時間の話です。僕は他の子がハサミで色紙をチョキチョキと切ってそれを糊につけてペタペタ貼って何か大きな絵を作ろうとする時間だったかと記憶しています。多分、初夏だったのかな?僕はツバメの巣を表現しようとハサミを使わずに手で色紙を切ってツバメの巣のフワッとした部分の質感を出そうとビリビリとやってたんです。勿論、木の枝だったらハサミで細く切りましたよ。
- でも、その時の先生が「ケルベロスちゃん!!ハサミを使いなさい!!」と僕を叱る(口調が)んです。僕はハサミじゃ表現できないフワッとしたゴミや羽毛の毛羽立ちすら表現したくてフリーハンドで色紙の繊維を毛羽立たせていたのだけど、どうもふざけて見えたようです。でも…ケルベロスといえどもまだあそこに毛の生えてない子供でした!!から、その想いを言葉に出力する術を知らず、「僕はハサミのシャープな切り口では表現できない微細な素材の表情をこの手で創り出しているのだ」と言えず…言えなかったーッ…言えなかったの。
- 仕方なくハサミを手にしたのをおっちゃんになっていかがわしい場所に出入りできる立場になった今でも忘れられずに悔しさを噛み締めています。子供はね…僕らみたいに言葉にしてちゃんと相手に伝えられないだけで事実は事実としてしっかりと受け止めているんですよ。ただ…自分の想いを出力できないだけ。だから、パパママの喧嘩に臨場したら、今後の身の振り方とか自分の行く末の損得勘定は何となくしてる。だから、どんなにエキサイトしてもパパママはそれを子供に晒さないで欲しいです(笑)。
そういった八丸の子供らしくない気遣いに複雑な心境で同意するパパの表情に僕は胸の奥をギュッと掴まれた気がしました。恐らく八丸が言うように移動式の生命維持装置を八丸に与えたい気持ちがパパには確かにあったけど、それで八丸が外に出かけてしまったら別の心配事が生まれると…パパは絶えず揺れ動いたいたのだと思います。それとはちょっと違う部分ですが…子供の八丸の中の大人の部分が示した拒否感に…「……そうか」の複雑なパパの表情に詰め込まれている気がしてなりません。
- ここ(この一コマ)は凄くよく描かれたなー…と思いました!!
大久保先生は岸本先生のお弟子さんとして『NARUTO -ナルト-』を手伝われていたのですよね。きっと。先生の詳しいキャリアを知っている訳ではありませんが、こういった小さな一コマに人の想いや心の揺れを岸本先生は絶妙な筆使いで描かれてきました。あの頃、僕らは登場するキャラのちょっとした目線…コマの外に存在する何かに向けられる、その行方にすら一喜一憂しましたから、大久保先生にも岸本イズムが大いに浸透している事が確認できて非常に安堵しております。
ちょっと脱線してしまいましたが、パパは八丸を愛していて大切に思っている。八丸も表面上は悪態をついたりしますが、できるだけパパの負担を減らそうと思う優しさがある。そして、その関係は八丸が大空を飛び回れるようになった今も継続している。ただ、八丸の急激な変化に戸惑いを隠せないパパとやや浮き足立つ八丸の温度差が二人の関係を一時的に悪くしています。しかし、それはお互いを想い合うこれまでがあったからこそである訳で、パパは八丸を上手に育てられています。
しかし、何でパパは移動式の生命維持装置(=特別な車椅子)を作る為にロッカーボールを必要としたのでしょうか?この世界のテクノロジーは非常に高度で、パパが乗るバイクには車輪がなかったり、固定翼や回転翼がない飛行体も数多く、エネルギーに関しても非常にコンパクトにパッケージされています。ぶっちゃけ、ロッカーボールの助けなぞなくしても移動式の生命維持装置なんて実現可能だと思うんです。きっと、八丸が見てた動画の飛行体だって実在する平易な乗り物の筈です。
だから、パパがロッカーボールの入手を八丸の移動式の生命維持装置の絶対条件としたのは、微妙に動力源の…地球が太陽のエネルギーで生命を育むように「小さな星」たるロッカーボールが人の思念を受け取りエネルギーに変換するコンバーターのように働くデバイスである…可能性があるにせよ、もっと他に八丸の将来に重要な位置付けがあったのではないかと、僕は考えています。これまでの描写でパパは侍についてかなり詳しいです。ってか、絶対に関係者です(笑)。
しかも高綱の侍魂・童子切”血吸”を鼻先に突きつけられても臆さぬ胆力を持ち、剰えその高綱の侍魂を達麻のキーホルダーである魔噛みの鍵を用いて八丸の内に封じて八丸の心臓を動かしていた!!という事実が何をか言わんやと(笑)。そして、魔噛みの鍵で八丸の左胸に封じた高綱の侍魂を取り出す為に「八丸の心臓を止める」を認証コードに設定したところに、八丸の移動式の生命維持装置にロッカーボールを必要とした意図の核心があるのではないかと、僕は思うのであります。
つまり…だッ!!
パパは八丸の側(そば)にロッカーボールを置いておきたかった訳ですよ。きっとロッカーボールを八丸の心臓を動かした侍魂と同じようにエネルギー源にした程度にロッカーボールを活用したにしろ、その真意は八丸の生死に関わるような難局において八丸の最後の選択肢として「元服」(=ロッカーボールの承認)を残したかったんではないかという事。その上で高綱の侍魂の認証コードが八丸の「心停止」だった点を踏まえればパパの持つ八丸の秘密がジワッと染みて来ませんか?(笑)
ま…既に八丸は「元服」してしまったんですけど、パパは侍関係の知識が明らかに豊富ですから、八丸の不遇な身体だって鍵侍(サイボーグ)になれば全て更になって解決する事くらい解っていた筈です。しかし、それでもロッカーボールを二次利用して移動式の生命維持装置を完成させようとしたのは、やはり八丸を争い事の矢面に立つであろう侍には簡単にはしたくなかったと考えたからでしょう。そして、それが八丸は「守られる側の人間」と断じたパパの本心に繋がっていく筈です。
いろんな可能性が考えられる描写ですが、パパが八丸の為にロッカーボールを活用しようとした意図の中にパパが八丸に掛けた何らかの保険的な配慮を感じてならんという事です。そうしたパパの思惑の基礎には八丸の素性、或いは素養といったものが横たわっているでしょう。有り体に申しげさして頂けるなら、パパ的には八丸は侍になって然るべき存在な訳ですよ。よく考えてみてください!!パパは八丸が侍になった事に特段に驚いてもいないし、ごく自然に不自然なくらいに受け入れられています。
「いつか必ずつかまえてやる」(鬼侍)
それで…鬼侍の登場ですよ!!きっと、パパがこれまでに至る理由はもっといろいろとあると思われますが、移動式の生命維持装置を製作するパパの手が、このフラッシュバックで一瞬止まったのは、仮に鬼侍としますけど、隻眼(?)のロン毛の鬼の形相の侍(?)が二人を付け狙っているからです。多分、鬼侍の存在がパパに八丸の外出を遠ざけさせていたのでしょう。その意味ではパパは意図的に移動式の生命維持装置の完成を遅らせてきた…という八丸の見解は強(あなが)ち間違いでもない訳です。
パパは八丸に自由を与えたいと強く願うも、反面、外出して目立つ事を恐れていたのです。それはこの鬼侍が八丸を付け狙っていたからだわ。何故、鬼侍が八丸を付け狙うのかは不明ですが、八丸の胸に封印されていた高綱の侍魂が”血吸”の異名を持つ童子切…つまり鬼を斬る真紅の刃だったのが、この鬼侍(鬼の形相の侍)と合わさりミスリードを絶賛誘発中で、そういう…コイッ、コイッ!!のお誘いにめっきり弱いケルベロスはまんまと乗っかって今まさに身悶えしているところなのであります(笑)。
続きまーす!!