サムライ8 八丸伝 第14話「父の秘密」感想③
「!」<ポツ><ポツ>(葉芽道)
「…雨が…この状態の
病人をかかえて飛ぶには
逆に危険だ」(葉芽道)
「そんな!」(八丸)
「近くの医療機関を探そう!」(葉芽道)
<ザー…>「……もういい……
オレは…保たん……」(パパ)
「父ちゃん…!!」(八丸)
「違う……胸の装置を
起動した時点で必ず死ぬ…
それが…コレの欠点でな…」(パパ)
「フフフ…
奴らの言う通り
…カンペキなものなど
造れた試しが…
ゲボッ!」(パパ)
「もうしゃべんないで!」(八丸)
「たのむから聞け…八丸」(パパ)
「奴らの言ってた事は本当だ
それに……<ザー…>
……
…一度オレは……
お前を殺そうと…した」(パパ)
「!!?」(八丸)
「……
…七つ子に力を戻す前に——
お前を殺せば…箱は開けられない」(パパ)
「だが…どうしても出来なかった」(パパ)
<ギュ…>
「生きようと…してた
その時…孤独な…
実験しか知らなかったオレに……
何かが起こるのを…感じた
特別な何かが…
だから…お前を連れて逃げ出した……
そして…この星に隠れたんだ……
…父親のフリをして
…お前を守ると決めた…
全てを…秘密にして
…だがどちらも貫き通せなかった
ただの…ハッタリになっちまった
…スマン」(パパ)
<スッ>「……」(八丸)
「ハッタリなもんか…!
どんな侍なんかより
めちゃくちゃ強ェーよ…父ちゃんは!」(八丸)
<ニコ>「……
今まで……ずっと…
騙してきて…悪かった
こめんなぁ…<ザァー…>
だが…これで…素直に死ねる……」(パパ)
「まだ!まだ…
親孝行が足らねーだろォ…!?
ねェ!だからそんなっ…」(八丸)
「これで…いい
本当にお前を縛っていたのは…
生命維持装置…なんかじゃない…
オレ…だった…
お前を護られる側の人間だと
成長も…夢も…やる事全て…
信じてやれなかった」(パパ)
<ギュ…>
「お前は…初めから…
……強かった
いつも…
こ…こんなの
全然乗りたかないね!
強い子…だった
こんなのに乗って喜ぶガキと
一緒にされたくねーんだよ!
オレを心配させまいと
いつも…強がって…くれた
……そして
アタとの闘い…でも……
お前は…もう護る側の侍だ…!」(パパ)
セリフが長いんでアレですが、大体の方は薄々…どこじゃなくて、パパさんが怪しーなとは感じてたと思います。パパさんの訳あり感は達麻も感じてて、家の裏に秘密のガレージとかあって、馬侍の黒馬(キーホルダー)の所定の位置に柄骨をしまってるのを見つけてビンゴでしたっけ(笑)。そもそも八丸の移動式の生命維持装置にロッカーボールを搭載する必要が何であったのか?とか、その前にその2億(円)をどこから調達したんだー(何でルピーじゃなかったんだー!?)ってね(笑)。
血吸・童子切高綱の侍魂が八丸の心臓を動かす動力でしたし、それがまた、八丸から取り出す為の認証キーが八丸の死とセットだった…という知恵の輪みたいな仕組みが、移動式の生命維持装置へのロッカーボールの搭載を必須とした設定と考え合わせれば、八丸が切腹して侍になる既定路線がパパの頭の中にはあったんだろうなー…と、僕は考えていました。こんだけエネルギーとか動力にとんでも技術が適用されてるのに侍魂とかロッカーボールなんてレアで高価なアイテムを使う必要性が乏しいじゃない!!
ま…パパの延命処置に葉芽道の侍魂が使用されてる描写がありますんで、血吸・童子切高綱の侍魂はアリかも知れませんが、ロッカーボールは要らんでしょ!!しかも、馬侍が金目で狙った高綱の侍魂の解除コードが八丸の死だなんて、そんな…殺してちょうだいな設定をするなんて、頭おかしいとしか…おっと失礼…でも、それは最悪の局面で八丸が侍になる選択肢をパパは残したかったんだろうなー…と思うと、パパさんは八丸の将来にかけた保険が危ない橋を渡った先にあるロッカーボールだった訳だ。
それと同じようにパパさんは自分の胸に侍魂の消滅装置を搭載していたんですね。穴ぼこの位置から考えて自分の心臓と引き換えに侍魂を消滅させる装置だったんでしょう。だから、アタさんと再会する前にちゃんと動くか確認してたんですよね。アタさんが自性輪身(侍魂を核として生み出された分身体)で来るとパパは踏んでたんです。いつか来るこの日の為に未完成だった装置を仕上げて…。勿論、それが自分の命と交換上等でも…。パパさんは自分は死んでも八丸を護る決意だったって事だ。
生まれたての赤子だった八丸の小さな手で博士の手を<ギュ…>と握ったのがきっかけでしたが、恋の始まりに理由が必要ないように、それが博士を八丸のパパに変えたのです。博士は八丸と出会ってしまった…のであります。その事実さえあれば、人がいろんな努力を重ねて人に成るように、博士は八丸を護る事で八丸のパパになっていけるのだと、僕は思います。そこにはきっといろんな感情があったでしょうが、その中核には間違いなく「愛」があったと思うんです。ところで「愛」って何だと思いますか?
愚問かも知れません。でも、言語化して「こうだッ!!」っと言い切れる人って少ないと思います。それに人それぞれに思い浮かべる「愛」が違います。僕は「愛」と「憎しみ」はそう違わない…なんて少し前に書いたりもしました。いろいろ考えてると分からなくなってくるけど、何も考えないでも「愛」を僕らは感じますし、自分が何かに対して「愛」を向ける事に気付けます。皆、「愛」を携えてはいるんです。これは誰しも「愛」を認知できているけど、認識出来ている人は少ないという事なのではないかと思います。
「愛」は「呪い」である…とも、僕は書きました。僕には八丸の背中に繋がっていた生命維持装置のチューブは愛の鎖のようだと思えました。それは侍になり物理的に八丸と断絶した後も見えない鎖として八丸の背中に繋がっていた事も、僕は感じてました。それをアタさんと闘う中、八丸は自分の背中に繋がった見えない鎖を一つずつ外していった訳です。あのチューブとは八丸にしてみれば精神的には「呪縛」のようなものだった筈です。しかし、それはパパにしてみれば純然たる「愛」だったのであります。
それがどういうものであれ、素因数分解していった果てでは、個々の感情に過ぎないのですから、良い悪いの価値観というものは普遍性を失います。それでも物事の良かれ…というものは確かにあるものです。しかし、それはこっち側の想いであり、向こう側でそれが同じ価値を持つかは別の話なのです。それでも、僕は僕が誰かを愛する事に異を唱えるつもりは毛頭ない!!それが相手にとって害悪でしかない局面は否定できなくとも!!パパはその「愛」の一面を八丸に詫びているだけなのであります。
これは僕の個人的で極限に偏った考え方であるかも知れませんが、人は誰かの「愛」というものを絶対的に評価すべきではないかと思います。それがたとえ自分にとって「呪い」であったり「鎖」であったり「檻」であったとしても、「愛」をくれた人の気持ちに率直にフォーカスすべきだと思うのであります。だって、その人は貴方を愛しているんですから!!その人が注いでくれた「愛」に対して感謝するのが人の道なのだと、僕は思うのです。愛してくれてありがとう!!って素直に感謝すればいいんじゃないでしょうか。
「愛」って何なのか!?っていうのは愚問かも知れません。否…愚問です!!そんなのこっち側の問題でしかないのだから。しかし、愛す側と愛される側が一方通行ではありません。僕らは愛し合えるのです!!その道筋がこんがらがってしまうのは何かしらの見返りを無意識に求めているからではないですか?ただ一つ…「愛」について言えるとすれば、それは「与えること」だと思います。「愛」とは唯々、与える行為なのであります。僕たち人間はその情動を抑えきれない生き物なのであります。
だから、パパは八丸を生命維持装置という「愛の鎖」に繋いだのであります。「お前は護られる側の人間だ」と、八丸を「愛の檻」に幽閉したのであります。それはパパにしてみれば八丸に対する最善だったのであります。それがパパの「愛」だったのであります。そこにあるパパの気持ちの芯というものを八丸は感じるべきなのです!!それは「愛」とは何なのか!?に対する八丸なりの答えになるでしょう。そして、それに気付けるか否かこそ八丸の分かれ目…。八丸の人としての分け目じゃないでしょうか?
パパが八丸に「お前は…もう護る側の侍だ…!」と言っているでしょ。それって「愛す側」って意味なんだと思います。パパが八丸を愛したように、今度は八丸が誰かを愛する番なのだと、パパは言っているのです。八丸がこのメッセージに気付けるか?は、八丸がパパに感謝できるか?にかかっているのです。それは「愛の本質」に八丸が気付けるかどうか?という事です。この気付きは人としての大きな潮目であります。少年少女はそれを肝に銘じ、思索を続けて欲しいと、僕は思うのであります。
きっと、その行いにおっちゃんとおばちゃんは涙すると思う。
そこに…その一点に「愛」というものの本質が確かに在るのだから!!
続きまーす!!
何も言わずに読んでみて欲しい…です。僕の「愛について」を…。