サムライ8 八丸伝 第12話「誰のために、何のために」感想③
「八丸 アン!逃げろ!!」(葉芽道)
「うっ………」(フルタ博士)
<ドク><ドク>
<ベチャ>(八丸)
「うわぁ~~~~~~…ん!!!
父ちゃあ~~~ん!!」(八丸)「父ちゃん
どこ~~~~~~!!?
何でいないの~~~!!?」(八丸)「おお!
起きちゃってたのか!」<ウィーン>(フルタ博士)「!」(八丸)
<スン><スン>「……」(八丸)
「どこ行ってたのォ!!?」(八丸)
「ホラ!新薬だ!遠出したかいがあった!
これでアレルギーもよくなるハズだ!」(フルタ博士)「…オレ……
オレ…父ちゃん
ずっと帰って来なかったら
…どーしよって……思って……
そしたら…
だんだん——」<フル><フル>(八丸)「うわぁあ~~~~ん!!!」(八丸)
<スッ>「そんなわけあるか!
オレはお前の父ちゃんだぞ!ずっと一緒にいるに決まってんだろ!」(フルタ博士)
「……
ホントにずっと…?」(八丸)「ハァ…お前はアレルギーを治すのもそうだが
まずその泣き虫を直さんとな
…父ちゃん心配で安心して出かけられもせんよ…」(フルタ博士)「それって…薬で治る?」(八丸)
「イヤ……
泣き虫は——……
…強がって治すんだ!!」(フルタ博士)
「……つよがって?」(八丸)
「そうだ!!
泣かないぞ!オレは泣かないぞ!
いつも笑ってるぞってな!」(フルタ博士)「……」(八丸)
「そしたら父ちゃん…
心配ってのしないで…………
安心できる?」(八丸)「ああ!強い八丸は
父ちゃん大好きだ!!」(フルタ博士)
「フフフ…そう?
分かった」(八丸)<ニコ>「やってみるよオレ」(八丸)
「おお!泣いた子がもう笑ったか!?」(フルタ博士)
「へへ…!
さっそくやってみた!」(八丸)
<ヒュー><ヒュー>(フルタ博士)
八丸の回想部分。セリフが沢山あって大変でした(笑)。八丸がまだ幼児だった頃の想い出でしょうか。八丸はアレルギー体質で病弱な子だったのですね。それを治そうとフルタ博士は東奔西走して八丸を治す薬を探し回っていたようです。八丸は泣き虫でパパっ子で、一人でいると不安で泣いてしまう子で、それがフルタ博士には愛おしくて堪らなかったのでしょう。泣き虫の治し方。フルタ博士がこんな風に教えてたのだけど、これって達麻が八丸に説明した「勇」そのものですよね。
しかし、八丸が達麻に説明された時、全然伝わらない風で、同時にフルタ博士がこの時した説明が回想で織り込まれることもなく…きっと、これは八丸の記憶の奥の奥に仕舞われていた大切な記憶だったのだと思います。それがフルタ博士の瀕死に臨場して表層に浮かび上がって来たのでしょう。時を重ね、苦難に遭遇し覚悟を決めた瞬間…人生の正念場で八丸はフルタ博士があの時、八丸に伝えたかった境地に追いつけたのです。ここに来てようやく八丸のレディネスが整ったのであります。
ここから…八丸の纏う空気が変わるんです。大久保先生はそれを見事に描かれています。八丸が少し大きくなったように僕は感じたんですが、きっと姿勢が良くなっている筈です。今までは腰砕けだったものが、背筋がピンと伸びてちゃんと前を向いているような…筋肉がしっかりと身体を動かし、地に足がついた…ようやく自分の足で歩き始めた八丸を見事に描かれていて嬉しかった。目線…レンズも広角側にシフトしてダイナミックなカットが増えてさすが岸本先生のお弟子さんだと胸が高鳴りました!!
個人的にはこのお話が一つの契機だと感じています。今までは若干、まどろっこしくも感じられましたが、これからはスパスパとお話が転がっていくと思います。これまでの浮ついて気持ちの伴わない八丸とは違って、今は自分の足で歩き始めたから、目つきが違いますもの。八丸はロッカーボールの儀式で侍になって生命維持装置からは解き離れたかに思えましたが、精神的にはズーッとあの頃のように管に繋がれて不自由なままだったんじゃないでしょうか。だから、僕は八丸を面白く感じなかった。
今、八丸は自分の背中に繋がれた目に見えない管を一つずつ外しているんです。パパとの想い出をなぞりながら…。今までパパから貰った言葉や気持ちを噛み締めながら…。これが八丸のセカンドバージン。これが八丸の「真の元服」なのであります。八丸が繋がれていたチューブとはフルタ博士の…パパの愛そのものだった筈です。しかし、ここでそれが八丸の可能性を制限していた事に気付ける人がどのくらい居るでしょうか?愛とは呪いなのだ!!と…知る人は、本当に愛を知る人なのだと、僕は思うのです。
続きまーす!!