サムライ8 八丸伝 第3話「戦車入刀」感想⑥
「八丸がいないうちに
話しておきたい事がある
大事な話だ
…これはただの刀ではない!
鍵となった侍だけが持つ「心の刀」
侍魂だ
この侍魂の重さ…
見えずとも
その辺のものとは
別格と分かる」(達麻)
「……」(パパ)
「これ程のものを
八丸の中に隠し入れておいたお主は
ただのチンケな盗っ人ではない事も分かる」(達麻)
<ガチャ>(達麻)
<ズズズ>(達麻)
<ズッ…>「フッ…
臆さぬか…いったい何者だ?」<スッ>(達麻)
「それと…
あれほどの…引力を感じた子はいない
あの子は…八丸はいったい何なんだ?」(達麻)
そういえば…八丸の心臓を動かす為に”名刀童子切 高綱の侍魂—通称「血吸」の剣”を”魔噛みの鍵”(侍の魂を封じておく為の鍵)で封じていましたね。八丸パパは浪人からロッカーボール を2億円(…yenなのな!!ベリーじゃないのなー)で購入しようとしてて、更に”高綱の侍魂”が浪人によると20億(円)で取引(=相場)されているとのことなので、普通に考えてパパってかなりの資産家そうですが、達麻はパパを「盗っ人」としていて、つまりは不自然な金持ちと感じていたのだろうと思います。
この世界の住人の生活がイマイチ分かってなくてですねー…。若干、農業系や運送業っぽい描写がありましたけど、全てが個性豊かで社会主義的と言うよりは自由主義経済っぽいので何らかの職業で生計を立てる必要がありそうです。その上、八丸が生命維持装置に繋がれる虚弱児できっとこれには莫大な資金が必要だろうと、僕は考えていたので、八丸パパは相当の土地成金か御曹司かなー…と思ってたんですが、でも…よく見ると人相が悪い。特に目が険しい!!それに拳銃持ってたし!!(笑)
ところで、この世界の建築様式で八丸んちと夜叉流忠道場の大棟(おおむね)って言うんですかね…屋根の天辺の意匠が刀みたいになっています。これがナナシの居室のある忠道場寮になると大棟は普通の屋根なんです。微妙に鬼瓦みたいのがあしらわれたりしてますけど、ま…フツーの三角屋根ですよ。ここ数日、僕はこのネタについて考えていましたが、大棟の刀のデザインって武家とか武士と関係があるんじゃないかなー…と、ボヤーッとですが考えています。
八丸パパは見た目…生身の人間で、侍(=サイボーグの身体)ではなかろうと描写から読み取れます。そして、達麻がやおら抜いた”血吸”…きっと真紅で切れ味のいい刃…をその鼻っ先に突きつけても動じない胆力の持ち主(つまり、只者じゃないという事)。その上、住まいは武家を意識させるモチーフ…という事で、もしかしたら武士の家系で、それが今はいろいろとヤバイ手段でかなりの大金を動かしてる可能性がある…というくらいには想像が及びます。
しかし、達麻の言う通り…”高綱の侍魂”の重みと申しますか、20億(円)という相場らしいですが、お金があっても簡単には手に入る代物でなさそうな雰囲気が漂います。その上でこれを入手できる妥当な案を考えると、八丸パパが”高綱”という侍と何らかの関係があって”高綱の侍魂”をお金云々ではなくて引き受けた経緯があったんじゃないかと膨らみます。それに達麻の最後のセリフ…八丸はいったい何なんだ?…というのが乗っかって<ワナワナ>と僕は震え始める…(笑)。
この振動にフツーに乗っかるなら、高綱→八丸が「浅からぬ縁(えにし)」で繋がりそうですし、もしかしたら八丸は高綱の忘れ形見…子孫の可能性があるんじゃなかろうかと思えてきます。そうして、このズッシリ重い別格の侍魂をその腹に納めていないって事で侍・高綱は既にお亡くなりになっていて、侍魂と忘れ形見の八丸を八丸パパがまとめて面倒見ていた…ということなのかな…と僕は考え至る訳だ…が、岸本先生はこういうありがちな路線は悉(ことごと)く外してくれるんだよなー(笑)。
それと八丸パパの名前が何処にも示されていないんですよ。しかし彼が高綱本人というのは生身っぽい(=サイボーグじゃない)ところで消えるので、高綱の家来とか関係者…例えば主治医とか、もっと言うと侍=サイボーグのエンジニアとかの可能性があるかも知れません。八丸につながっていた大きな生命維持装置や移動式のそれらが彼の手作りのようだったので、則巻千兵衛さんみたいな発明家なのかな?この辺は次号で何らかの提示がありそうなのでワクワクしますね。
まだまだ第3話なのでいろいろと描写が足りないので、ごちゃごちゃ考えても答えは出なそうです…当たり前ですが(笑)。しかし、そこで感じた違和感がいつしか解き明かされたり、気付かないような微妙な伏線が後々あまりにも見事に回収されて突然、体の中を電気が奔ってしまう!!のが岸本先生の作品なのであります。ま…あんまり深すぎて岸本先生も忘れちゃう伏線もあるにはあるのでアレですけど、何と言うか今…胸に閊(つか)えて腑(ふ)に落ちていかない感覚を大切にしてください。
僕は『NARUTO -ナルト-』の時も、今やっているように根掘り葉掘り物語を掘り返しては楽しくやっていました。七〜八年くらいかなー…最終回までやってやり尽くして一度、果てたんです。あの時、成仏しちゃったんですけど、また岸本先生が週刊(=週ジャン)で始められると聞いてこの穢土に舞い戻って参りました。岸本先生の作品は素晴らしいです。漫画であるけれど、僕は本格的な文学作品だと思ってお付き合いさせて頂いています。
よく噛まないと飲み込めないし消化もできない!!
だからこそ…凄く味わい深い作品なのです。
では…第4話で…また。
第3話「戦車入刀」